34回 全国ばら切花研究大会静岡大会報告
−消費ニーズに対応するバラの生産と流通・販売−
会期 平成15年11月11日(火)〜12日(水)
会場 静岡県熱海市 ホテルニューアカオ
目的 日本のばら切花生産は、輸入ばらの増加と長引く不況の中で消費は伸び悩み、花きニーズの多様化によって、過剰気味に推移しており厳しい状況下にある。多様化する消費者ニーズに対応した、ばら生産と流通、そして販売の研究が急務となっている。そこで、全国のばら生産者が一堂に集まり、現状の把握と次代に向かって経営体質の強化を図るための研究大会を開催する。
参加人員 402名
会長あいさつ
「消費ニーズに対応するばらの生産と流通・販売」を大会テーマに第34回国ばら切花研究大会が、この風光明媚な静岡県熱海市で開催できます事を大変うれしく思います。また開催にあたり、静岡県支部、県当局、及び関係機関の御苦労、御協力に厚く御礼申し上げます。
研究大会の内容は、昨年から講演や先進事例の発表を多くしました。今年は多様化する消費ニーズを捉えて、生産にあたる為のヒントを提供する事がテーマです。流通も、市場法の改正や低温バケット輸送などにより大きく変わろうとしています。販売もまた、お客様に喜んでもらえる商品をお届けする為の工夫が必要です。時代は今、画一的なものに飽き足らず、個性化に向かっています。バラいつまでも売れる商材であり続ける保証はありません。業界が団結し、連携し合って消費拡大に努める事が大切であると思います。
二日間の研究大会を通して、多くの情報を得て課題を見つけ、各々の経営の改善に繋げて頂きたいと思っています。
国際化の進展や長引く不況など、取り巻く環境は決して楽観できるものではありません。しかし、みなさんの英知を結集すれば、克服できると信じます。

足腰の強い日本のバラ切花生産の確立に結びつく大会となるよう祈念して、あいさつと致します。
  講演内容
1日目
「多様化する消費者ニーズにどう対応するか」

講師  法政大学経営学部教授 小川 孔輔(JFMA会長)



多様化する消費者ニーズと言われているが消費者ニーズが無限にあるわけでわなく区分してみると2〜3に分けられる。その消費者ニーズも花に関しては、花屋、生産者、関係機関によって創られています。現在、元気の良い花屋さんは、他産業からの参入の方たち多いです。斬新なアイデヤの元、常に消費者に好まれる商品を提供できる事が必要ではないでしょうか。
「日本の花卸売市場とフローリストの最新動向」

講師  大田市場花き事業協同組合理事長 川原 常光

ばらは、生物なので最後まで咲ききる花を提供して頂きたい。生産、市場、小売店と、ばらが流通する中で細心の心づかいの元に消費者までお届けしたい。現在、生産現場と小売店との交流が殆どなく市場を介してのみの交流です。これからは、生産者と花屋との直接交流が不可欠ではないでしょうか。
「バラの新しい流通・販売 −生産者の事例から−」

1.バケット輸送による品質保証
講師  JA大井川(静岡県) 花卉センター長 近藤 泰次


大きな生産地ではないのでバラを主体に他の4部会の考えを統合のうえ販促に対応してきました。高品質に重きをおく生産でなく将来のホームユースに重きをおいて対応するバケット流通に踏み切りました。
バラにおいての栽培管理(土壌分析、残留農薬、栽培履歴等々)、ベントネック、鮮度保持に特に留意して生産マニュアルの作成をしました。生産現場においては徹底して管理を心がけています。
これからは、市場、花屋さんとのコニュニケーションを重視して対応していきたいと思います。

2.都市近郊における直売戦略

講師  神奈川県  神部 喜治

バラを栽培して30年が過ぎましたバラ栽培においては皆様と同じように栽培、販売、品種選定、器具設備等々苦労が絶えませんでした。平成8年より地の利(都市近郊)を生かして妻が直売を始めました。この8年で5倍の生長をとげ売上の6〜7割を占めるようになりました。
私もモットーは、次のとおりです。
Place(場所)price(価格)Presentation(品揃え) promotion(消費宣伝)
これからも、お客さんに満足頂けるバラを栽培し花の持つ癒しの心も大切にしたいと思います。
1日目の総括
生産者サイドにおいては、栽培、出荷調整、輸送、品質管理、等々のマニュアルを作成て徹底した管理体制の見直しが必要とされる。その上で直接消費者に接している花屋さんとのコミュニケーションを持ちつづける必要がしてきされました。都市近郊等の条件を満たした生産者には、直売の方向も一つの手立てとして経営に取り入れていく必要もあるのではないか
2日目
「多収を目的としたバラ栽培の新技術」

講師  兵庫県立農林水産技術総合センター 農業技術センター園芸学部
主任研究員  小山 佳彦(農学博士)

バラの生産者は、バラは高級花材というイメージが大変強くカジュアルフラワーが受け入れられなかった。現在、ホームユース(新鮮、日持ち、価格)と言う言葉で家庭消費の花に需要の開拓が進められています。特にバラにおいては、ベントネック等の多くの問題を抱えています。そこで、生産現場からホームウースのバラが栽培できないか一定長収穫法 基部収穫法にて比較したところ一定長収穫法(50cm)は、品種にもよるが基部収穫法の5割〜倍近くになります。 栽植密度を増やすことにより切花本数も確実に増加します。本数を切るだけでなくホームユースとして消費者に楽しんでいただくため栽培管理を徹底して下さい。
「バラの多収栽培と高品質栽培・生産者の事例から」

1.多収栽培

−ハイラック栽培導入によるバラ生産性向上−
講師  茨城県  根元 勝

平成10年にハイラック栽培を導入して「1年間を通して安定した採花本数相場の維持」経営の向上に努め同時に多収栽培に取り組んだ。導入初年度は、坪当たり315本でまあまあの手ごたえを得ました。11年は、樹勢維持のためHB101を使用して405本12年は、540本と初めて500本をクリアいたしました。以後植物根生育促進剤により根張り向上か 13年から農薬散布低減のため木酢液使用597本14年天候不順の影響にて556本に減少多収栽培に取り組む中、採花作業の改善が新たな課題となっています。これからも、多収につながる技術を積極的に導入してバラ経営の向上に努めたいとおもいます。
2.高品質栽培
講師  広島県  神田 哲而

バラ栽培を初めて10年です。栽培、品種選定、販売等々すべてが1からのスタートでした。バラをはじめる前は、キウイフルーツを栽培していたのでその経験を生かして消費者に喜んでもらえるバラを心がけて栽培管理を行なってきました。中でもバラの品種選定は、難しく出荷のたびに市場のセリを見つづけています。少しでも疑問があれば花屋さんに相談をしてきました。10年経った今は、一般企業の経営方針に学び少しでも消費者に受け入れられる製品を心がけています。 最後になりますが、常に感謝の気持ちを心がけています。
2日目の総括
本日は、2例の事例が発表されました。どちらも素晴らしいと思います。これからの時代は、一人一人がプロフェッショナルの気持ちを持ちつづけていなければ生き残れないのでしょうか。